海の近くで暮らす人間にとって、
もっとも春を身近に感じさせてくれる海の幸は、“海藻”である。
そして今年も、いよいよその季節がやって来た。

家族と一緒に南房の海岸へ出かけてみると、
小舟の漁師たちが海底に繁茂するワカメを刈り取っている風景。
もちろん、一般人が海藻を収穫するのは禁じられているので、
我々は海岸に流れ着いた「おこぼれ」をいただくのだ。

少しだけ持ち帰ったワカメを湯通しして、ワサビ醤油で食してみる。
鮮やかな緑と確かな歯ごたえの中に春を感じる。
そういえば、ウチの庭先にはフキノトウも顔を出していたなあ。

異常気象が当たり前になってしまった昨今だが、
生き物たちは、慎ましくもしっかりと命を育んでいるようだ……。