私が子供の頃によく通ったのは、千葉県の手賀沼に注ぐ大津川でした。
通称、「中の橋落とし」。
昭和40年代の当時、この釣り場は近隣の「呼塚の落とし」「今井の落とし」などと並ぶマブナ釣りやタナゴ釣りの聖地とされていて、週末になると都内からも大勢のベテランの釣り人が訪れていました。
そんな手練の釣り人たちに混じって、地元の釣りガキ(私のこと)はいろいろな技術を横目で盗んでいたわけですね(笑)。
ポイントの選び方、仕掛け作りの基本から状況による工夫の仕方、エサの探し方、装餌方法、誘い、アタリの出し方、 アワセのタイミング・・・。
当時、釣りバカだった父親からも徹底的に釣りのノウハウを叩き込まれ、それが現在の私を形成していると言っても過言ではありません。 

その父親が口癖のようによく言っていたのが、「自分が住んでいる場所の3里(約12キロ)以内で釣れた、自分の薬指の長さ以内の小魚を丸ごと食べると、絶対に病気しないよ」でした。
とくに、コイ科の川魚の生命力をそのまま頂くことは、昔から不変の健康法なのだと。。
なので、釣ったコブナたちはすべて持ち帰って食べてましたね〜。
当時、一日に釣るコブナは200尾以上。
それをシーズンの冬〜春は毎週末のように釣っていたので、トータルで持ち帰っていた匹数は尋常じゃないですね。
不平も言わずにおいしく料理してくれた母親には、もう感謝しかありません。
その母親がよく作ってくれて、私の好物でもあったのが「コブナの甘露煮」です。

当時の作り方は、フナの内臓とウロコを落として素焼きにし、それをカラカラになるまで干します。
干したフナを酒と醤油、ミリンで煮付ければ完成ですね(砂糖は使いません)。
ただし、この方法だとちょっと手間が掛かるので、現在の我が家ではウロコは落とさずにそのまま素揚げにして、天日干しも省略してすぐに煮付けてしまいます。
この方法だと焼き干しにするよりも口当たりが軟らかくて、子供でも丸ごと美味しく食べられます。

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 正月に釣ったコブナも、大きめのはリリースして、残りを甘露煮にしてみました。

50年前に父親が言っていたのは、まさに「身土不二」「一物全体食」のマクロビオティックの考え方そのまま。 
マクロビについては、私も30年ほど前に伊豆大島で自然塩を作っていた頃にかなり勉強しましたが、いまでは健康食にこだわることはなく、身近な場所で釣ったり、自宅の畑で採れる旬の食材をバランスよく食べる暮らしを送っています。
単純にそれが美味しいし、生ゴミも畑に返せば食物ロスも出ないですしね。
近年、昆虫食が注目されていますが、その前に身近な川魚というのも見直したいところです。
でも、その身近な川魚が激減してしまっているニッポンの環境問題こそ見直したいところですが。。

この甘露煮を食べるたびに、昭和の時代に家族で楽しんだコブナ釣り場の風景を想い出します。。